徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−
 


*二百三十二段*<ズームアップとロングショット>2009.3.7

 何年か何十年かの持っている本の中に、たまにだが、思い出しては手に取りページを開いてみる本がある。吉田秀和さんの本と尾崎喜八さんの本、それに斎藤秀雄の生涯をたどった本、なぜかこれらをふっと読んでみたくなる。
 吉田さんがセザンヌの絵画とベートーヴェンの音楽は自分にとって特別だと書かれていた。ゴッホやセザンヌの絵画を実に細かく見ておられ、その慧眼には感服するばかりなのだが、一度見ただけでいろいろなことが見えてくるのではないことも書かれていた。

 ベートーヴェンの音楽は実に個性的だ。アンバランスの妙ともいうべきか、意表をついた表現で圧倒的な存在を示している。絵画も静物を描くときに、写真を撮ったように描かれているのではなく、画家の思いや表現したいことが実際の大きさとかバランスとは違った形で表現されているとのこと。なるほどと思った。
 今度一緒に演奏してくれるフルート奏者が、若い時は感じなかった特別な感じを今はベートーヴェンに感じていると言っていた。若い人でベートーヴェンは???と思う人もいるのは確かだが、内心では歳をとると、その素晴らしさがわかるよ!…とつぶやいている。私にとってもベートーヴェンは特別な作曲家だ。

 自分が日本人であるということを、指揮をしながら感じることが多くなってきた。心の軸や思想の原点や感性の元は、この「日本人」というところに帰するのではと段々確信をもつようになってきた。その感覚を殺してしまうのではなく、その感覚を認め、それを生かした表現をすることが自分の務めだとも思う。
 ある数字を耳にした。人気の衰えないテーマパーク、東京ディズニーリゾートが年間来園者2200万人だそうだ。この数字は増え続けているのだそうだが、この数字をもってしても越えられない観光地がある。それは「京都」だそうで年間来訪者5000万人とも聞く。私は両方とも好きなので、もちろん数多く行っているのだけれど、この数字には、納得、と思わされた。
 ニューヨークでは日本酒が大人気で日本酒のバーがあり、中にはワインよりもおいしいと言っているアメリカの人もいるようだ。この日本酒は、吟醸酒だそうで、そうだとすればフルーティーさも十分味わえるから、これも納得だ。

 最近、自分の発想や感じ方の拠り所はどこにあるのかと考える。ただし、それだけを考えていてはそれこそものの見方がズームアップでの見方に偏ってしまう。ズームアップとロングショット・・・このバランスをとらねばならない。



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