徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−
 


*二百三十六段*<天童荒太とベートーヴェン>2009.3.11

 天童荒太氏の対談を読んだ。昨年の直木賞受賞作「悼む人」について、にその多くが割かれていたが、何年か前に同氏の「永遠の仔」を読んだ時のことを思い出した。上下二巻の大作であった。三千ページを数える分量も内容もずっしりとした重みの残る作品だった。
 長いのに緊張感が途切れないというか、とにかく、遊びと思わせるところがほとんどなく、常に頭と心を傾注して読まなければならなった。

 対談の中で分かった。作者は、書こうとする主人公になりきるくらいに、同一化というか、入り込むというか、すさまじく没入するのだということが。
 「悼む人」をまだ読んではいない。ある程度の覚悟をして読み始めないと、と思っている。

 構想から7年をかけたとのこと、なんだか、ベートーヴェンを思い起こさせる。多作家ではないベートーヴェンも、第五交響曲では構想から完成まで5年をかけている。あの四つの音のスケッチから、だ。そして、その出来上がった作品のすきのない、一部の無駄もない、そぎ落とされつくされたかのような完成度・・・

 作曲家、作家という職業、あるいは芸術家として、私などには想像できないエネルギーと力の持続力をまざまざと感じざるを得ない。
 千分の一、万分の一でも近付きたいという思いだけでも持ち続けたい。



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