徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−

*二十四段*<想い出の断層−13−>2007.12.17

  青山タワーホールというホールがあった。場所は地下鉄銀座線、外苑前駅のすぐそばだ。400人程度の客席数でクリーム色を基調とした明るい、シックな感じのおしゃれなホールだ。

 特徴のひとつに何といっても、響きの良さがあげられる。客席にいても、舞台にいても心地よかった。備え付けのピアノが当時としては少なかったベーゼンドルファーのフルコンでこの音色を聴くのも魅力のひとつだった。ホールのピアノといえばスタンウェイが大部分だった中で、このホールにいけばベーゼンの音が聴ける。

 何回もこのホールで演奏会をやった。学生の時から関わってきた合唱団の第一 回演奏会をここで開催した。なぜかこのホールで演奏会をやると客席が埋まった 。
 都内ではイイノホールが人気があった。私は舞台に立つことはなかったが客席にはよく座ってた。ほかのホールではどこで演奏会をやっていたのかを振り返ると、日経ホール、 東邦生命ホール、安田生命ホール、朝日生命ホール、日仏会館ホールなどだった 。生命保険会社がホールを多くもっていた。第一生命ホールもあった。これらの ホールのいくつかはもう無い。消防法の改正があり、スプリンクラーの設置が義務づけられたこともあり、種々の事情が重なり閉鎖に至ったのだろうがそれぞれの個性のあるホールだっただけに閉鎖は残念だった。
 
 思い出の青山タワーホールの入っていたビルはいまでも建っている。東邦生命 ビルや日経のビルも建物はあるので目にすると懐かしい。 もちろん今では、民間会社の運営のホールが新しく生まれ、多目的ホールとい う形から音楽専用ホールへとその方向も変わっている。音楽をする者にとって何 より響きの良いホールが生まれるのはうれしいことだ。備え付けのピアノのもスタンウェイ二台、ベーゼンドルファー一台を持っているホールが多く小ホールで もパイプオルガンが備えてあったりポジティブオルガンがあったりする。これだ けでも隔世の感がする。
 
反面、ホールの響きという点ではほとんど残響のない日比谷公会堂や旧NHKホールや虎ノ門ホールなどで聴いた音も懐かしい。あの乾いた音の中にどうしても音楽をしたいとか音楽を聴きたいという心の渇きを満たしてくれるものがあったのだろう。あるいは人間が音へのハングリーな気持ちを持っていたのかも知れない 。満たされることが必ずしも幸福ではないかも知れないとも思う。

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