徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−
 


*三百三十一段*<嘘も方便>2009.9.14

 夕日がきれいだった。雲の厚さが薄くなり、大空に繊細さが増したような気がした。9月も半ばだ。一か月前にはもちろん真夏だったのに、あっという間に秋に入ってしまった。夏の暑さはいやなものだが、終わってしまえば懐かしい。春から夏は季節のクレッシェンドで秋から冬はデクレッシェンド、dimのようだ。一年という単位を考えたり、一年を12か月に分けたり、一月を30日に決めたり、と人間の考えることはすごいと今更ながらに思う。単位がなければ、季節の表現のしようもないし、年齢もないし、節目がないのだから、今では想像もつかない世界だ。

 ある駅で、新幹線の時間を一本早くしようと、変更のために緑の窓口に行った。新幹線の停車する駅ではなくて在来線の比較的小さな駅だった。私の前に新幹線の指定席を買おうとしている女性がいた。その人が、指定の注文をひとつひとつしていく。在来線の発車時間は迫る。やり取りを聴いているとその人も早く買って、その在来線に乗らないと予約している新幹線には乗れなくなるのだが、延々と席の選択をしている。係員も一回ごとに調べるのだが、間際の時間の新幹線の指定席がそんなに空いているはずもなく、返事はありません、ありません、の連発だ。私は思わず「早くしてくれないと、新幹線に間に合わないよ」と言ってしまった。間に合わないというのは、その人も私も、なのだが。

 結果はギリギリに間に合って在来線に無事に乗れて、新幹線にも乗れたのだが、新幹線が同じ車両になって、ようやく延々と席の選択をしていた理由がわかった。その女性は、服装も態度もやり手の営業マンのようで、乗り継ぎの時の携帯の話し方からもそう思えたのだが、同じ会社の人がグループでもっと前の駅からその新幹線に乗っていて、車内で合流する予定だったようだ。
 学生の旅行でもあるまいし、わずか二時間半の新幹線だ。あんなに時間をかけて席を選んで、後ろに並んでいる人のことを考えないのか、と思った。それに、結局はぴったりグループと合流できる席はなかったのだ。営業する人ならもっと周りの人のことを考えろよとは私の独り言だ。
 若い人だから、上司に言われたのか、言った上司も上司だし、その会社も大した会社ではないな、と勝手に想像をしてしまった。

 組織の中に入るとその組織のことしか眼中になくなる。そんな感じだ。会社ぐるみでの偽装行為や詐欺まがいのことが時々報道されるが、さもありなん、とも思える。会社のグループの席の近くの指定席を買えといわれたと思われるその若い女性も思えば気の毒だ。機転のきく人なら、選択の時間がなかったとか、あいにく周りの席がなかったとか、嘘でもつけばよかったのに・・・と思った。後ろに並んでいる人が早くしろ、とせかしたので席を選べなかったとか・・・こんな時に使う嘘は「嘘も方便」の範囲に入るのではないか。

 秋を感じ、夏の思い出は何かな?と考えたときに、ふと、その日の出来事が思い出された。

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