徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−
 


*三百七十五段*<蒸気機関車>2009.12.8

 偶然に蒸気機関車の映像を目にすることがある。カラーでの映像は、大体私が学生から社会人になろうか・・・というくらいの時期だ。むろん白黒(モノクロ)の映像はそれよりも前だ。

 C56とかC58とか、D51とか、全国各地の蒸気機関車が走っていた路線を次々に紹介してゆく。ただ、蒸気機関車の走る姿だけが流される。石炭を釜に人力で、スコップで入れる場面と、汽笛を鳴らすところはかなりの割合で映される。それ以外は蒸気機関車、そのレールを走る姿・・・これがメインだ。

 この映像には鉄道マニアではない私も引き込まれる。動輪の数が3つの場合は「C」、4つの場合は「D」という頭文字がつくのはだれもが知っているだろう。その姿を見ていると「C56」「C58」は優雅に見え、「D51」は武骨に見える。「C」型を貴婦人と称した人もいたようだが、それもうなずける。

 私の記憶では一回だけ蒸気機関車に乗った記憶がある。常磐線・・・だと思う。常磐線は電化が遅れていた路線だから多分そうだろう。確かに、煙が客車にも入ってきた。トンネルに入ると当然窓は閉めなくてはならない。そのタイミングが遅れると煙が車内に入るということだ。意味は違うが、「煙が目にしみる」というようなものか。

 実は息子が小さいころに秩父の「パレオ・エクスプレス」という蒸気機関車に乗った。これを回数に入れないのは、観光用に走る季節限定の機関車だったからだ。それでもまぎれもない本物の蒸気機関車だ。幼い息子には、蒸気機関車の意味がよくわかるはずもなく、喜んでいたのは実は大人だけだったり・・・の一コマだ。

 三重連という機関車三台での走行がある。三台を連結しなければ急こう配を登れない。「D51」の三重連・・・これは豪快だ。登り坂になると、三台の機関車が一斉に黒煙を吐く。

 一台では上れないこう配を三台で乗り越える。それも必死で、だ。人間と同じではないか。音も静かで、いとも軽々と動き出す電車と違い、人間の息づかいを思い起こさせるような蒸気機関車・・・動態保存の数はどんどん少なくなってゆき、やがては消えるのだろう。その営みが人間の常だと思えば、受容するしかないのだが、この独特の息づかいをこれからの人たちはもう感じることができないのだろうか。

 スーっと走り始める新幹線、いつの間にか時速300キロだ。景色はスピードが速すぎて、近くのものはよく見えず、駅弁なんて買うのも無理だ。それでも、移動手段としてみれば誠に合理的で、「こだま」には耐えきれず「のぞみ」を利用しようとする自分がいる。

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