指揮者 Conductor
高橋 利幸 Takahashi Toshiyuki


徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−
 



*四百二段*<ラクリモサ(涙の日)>2010.2.25

 春一番だと思われる強風だった。夜中になったが、郵便物をポストに入れるために外に出た。なんとなく春の匂い、春の香りを感じた。2月の終わりだ。このまま春に入ってくれればいいのだが、自然はそうたやすくはないだろう。

 以前に県民合唱団の「ロ短調ミサ曲」のことを書いた。今はモーツァルトとフォーレのレクイエムの公演が三日後に迫っている。最近は一年おきでの県民合唱団の指揮だから、あっという間に二年が経ってしまったことになる。

 時間の経過は素晴らしくもあり、恐ろしくもある。初めての県民参加型事業として開始したのが15年前だ。95219日、モーツァルトのレクイエムを取り上げた。半年間の練習を積み重ね、いよいよ本番の28日前になる117日に、阪神淡路大震災がおきた。一月が経っても死者の数が増え続けていた。その中でのモーツァルト「鎮魂ミサ曲」の本番となった。震災で亡くなられた方、また行方不明のままの方へのせめてもの追悼の気持ちを演奏に込めた。特別にアンコールとして「ラクリモサ」(涙の日)を演奏した。モーツァルトは、レクイエムの7番目に当たるこの曲の作曲途中で永眠した。完成半ばの「ラクリモサ」まさに「涙の日」だ。この曲以外に鎮魂の曲はないと確信した。

 今年は阪神淡路大震災から15年目になる年だ。15年前のその年と同じ曲を演奏する県民合唱団・・・レクイエムの公演ではアンコールは演奏されないのが恒例なのだが、今年は特別に第一回の演奏会と同様に「涙の日」を演奏しよう。県民合唱団は一年ごとの「邂逅」の合唱団だ。瞬間に巡り合えた演奏者たち、公演の場においで下さった聴衆の方々とともに、事業を支えて推進してきた千葉県文化振興財団のスタッフの人たちの労をねぎらう思いも込め、ひたすら「邂逅」の意味を感じ合う時間を持ちたいと願っている。

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