指揮者 Conductor
高橋 利幸 Takahashi Toshiyuki


徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−
 



*四百十二段<名人>2010.4.4

 タケノコを掘った。厳密に書くと、主に私が芽を見つけ、掘る名人が大部分を掘ってくれた。私は掘るまねごとをわずかな時間しただけなのだが、掘ったということにする。まだ地中からかすかに芽を出しているタケノコの芽を見つけるのも、草を払ったり土をどけたりで、黙って地面を見つめているだけでは見つからないのだからそれなりに労力を使ったのだ。

 一時間で5本を掘りだした。空中にはまっすぐに延びる竹の幹だが、地面の中には横に長々と根を張っている。この根がかなり丈夫で強い。そんなことを思いながら、さすがに少しの汗をかきながら、そして斜面に映えている竹藪なので、それなりに苦労をしながらの収穫だった。

 食べ方だが、洗って、下の方だけ細かな根を払い、後はバーベキューの場所に持っていく。するとそこにはバーベキューの名人がいる。この場所は名人がすべてを仕切る。肉もブロックのまま20分から30分をかけて焼く。タケノコもその中に加えてもらう。皮付きのままだ。味も何も付けない。出来上がったタケノコの新鮮なことと、竹の香りと、少しの苦さと、それに勝る甘さを味わう。名人が言うには「炭」の力だとのこと。薪とも違う炭の力、これは遠赤外線の力か、とにかくうまく感じる。
 焼肉ソースなんてものは使わない。肉は塩コショウだけだ。大きな塊の肉を切ると、肉汁が、ジユーッと染み出る。
 洗練されたレストランのステーキとは全く違う味だ。このバーベキューの方が確実にうまいと私には感じた。

 タケノコ掘りの名人といい、バーベキューの名人といい、いろんな特技を持つ人がいるものだ。好きこそものの上手なれ、のことわざを思い出した。50人ほどもいるパーティーだ。何時間もバーベキューのかまどの前で、肉やソーセージやタケノコを焼き続ける姿には神々しささえ感じた。名人といわれる人と話をすると、決まっていいひとだ。いい人でなければ、ほかの人が談笑したり、演奏を聴いたり、お酒を楽しんでいる中で、2〜3人の人を従えてバーベキューをひたすらやりつづけることは難しいだろう。なんだか、感心してしまった。
 このちょっとした場面でのちょっとした名人との出会いはなかなか楽しいものだ。

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