指揮者 Conductor
高橋 利幸 Takahashi Toshiyuki


徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−
 



*四百五十八段*<アバードの指揮>2011.2.1

 久しぶりに、アバード&ベルリンの演奏を映像で見た。1992年、サントリーホールでの、このコンビによる初来日の録画だ。19年前のものになる。時間の経過を改めて思い、それ以上にこの演奏の凄さを痛感した。

 曲はブラームス、Vn協奏曲、交響曲第2番、アンコールがハンガリー舞曲第1番、この中では当然交響曲が白眉の演奏だった。Vn協奏曲は、交響曲に匹敵するほどの大曲だ。ムローヴァはよく弾いていた。まだ、若かったし、線が細い。
 アバードは協奏曲を暗譜で指揮をする。これにも驚いた。いつもそのようなので、驚く。それに、交響曲では、指揮が曖昧に見えることが結構見かけられ、それが一因で、アンサンブルの少しの乱れを見せるベルリンフィルだが、協奏曲では、ある程度感情を抑えての指揮と演奏だ。完璧にソリストをサポートする。というよりは、ソリストをリードする。

 ベルリンフィルはブラームスの交響曲の全曲録音を何回かしている。最近は、サイモン・ラトルとの録音録画があり、日本でも同じ曲で演奏したことが思い出される。考えすぎの、神経質な指揮と、イマイチ乗りきれない奏者たちの様子が、私の中ではマイナスのイメージとして残り、ほとんど演奏を聴く気になれなかった。
 カラヤン指揮の時は、ブラームスよりもカラヤンが主張されているので、これも、どうかな、と思っていた。
 アバードの指揮は、この二人よりも、自然でしなやかだ。それに熱もある。ベルリン特有の団員の腕達者な面が表に出ている。

 この組み合わせの演奏は、両者の息がぴったり合った時のレベルの高さは比べるものがないくらいの高みに達する。もちろん、時には気のないような演奏も記憶にあるが。

 録画はVHSのビデオテープでの録画だ。画像と音はたいしたものではない。(19年前の録画を支障なく観て、聴く。考えてみれば素晴らしいことだ。贅沢は言えない。)
 そうは売れないクラシック音楽では、DVDでの発売が少ないことが歯がゆいことだ。
 観て、聴いて、それが意気軒昂の起爆剤になり、心の潤いになるこのような演奏は私の宝物だ。

 映像では、今は引退してしまった団員や、アバードといまだに演奏している奏者を目にすることができる。この対比にも心が揺れる。

 いまの気持ちの高ぶりを書いておきたくなっての「徒然草」になった。

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