指揮者 Conductor
高橋 利幸 Takahashi Toshiyuki


徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−
 



*四百八十四段*<ニューアーティストコンチェルトシリーズ 2012>2011.12.5

 ニューアーティストによるコンチェルトシリーズ、今回は七日正月ともいわれる七草の日、1月7日の開催だ。3人のピアニストが絢爛と新春を飾ってくれる。曲目もピアノ協奏曲の中で名曲中の名曲を選んだ。各地で数多く開催されるニューイヤーコンサートの中からご来場くださった皆様に、一番のご満足をいただけるはずだと自信を持ってお届けする。
 
 会場のルーテル市ヶ谷ホール、ここが温かい響きとアットホームな雰囲気で何とも言えない魅力を持っている。室内楽や室内オーケストラの演奏にぴったりの会場だ。ホール選びは企画する際にかなりのウェイトを占める。出来うる限り客席と舞台の一体感を求めたい。一つの条件が舞台の高さだ。前列の人が舞台を見上げるような高さのステージだと、上から目線で演奏をしているような気がして私はあまり好きではない。(意見には個人差があるのでそうでない人もいるだろう。)舞台の高さ45センチ、残響1.45秒のこのホールは理想のホールだ。(紀尾井ホール、浜離宮朝日ホールも同様に素晴らしい。)
 
 リストが作曲したピアノ協奏曲が何曲あったのかは不明とされている。定説は1番と2番の二曲だといわれる。今回の1番は4楽章構成、楽章の切れ目がないことの特徴とともに、第3楽章ではトライアングルが縦横無尽に活躍するところから、初演ののちに批評家ハンスリックがトライアングル協奏曲と呼んだエピソードが有名だ。
 
 モーツァルトのピアノ協奏曲第20番ニ短調は、モーツァルトの数少ない短調の曲の中でも代表的な曲だ。数少ない短調の曲は、一見明るい作曲家モーツァルトの心の深奥が窺えるような気がする。多くの長調の作品をモーツァルトそのものだという意見もあるし、私のように
数少ない短調の作品をモーツァルトと感じる人もいる。この曲は後の作曲家に愛された。第1楽章のピアノ独奏の聴かせどころ「カデンツァ」をベートーヴェン、ブラームスが作曲していることがその証だといえる。今回、誰のカデンツァを演奏するのか・・・ソリストの判断次第だ。ベートーヴェンからカデンツァは作曲家が作るのが主となったが、もちろんモーツァルトはカデンツァを作曲していない。ソリストに委ねられていた。
 
 グリーグのピアノ協奏曲はモーツァルトから85年後、リストから17年後に作られた。時の経過と併せて作曲家の出目からの特徴を感じてもらえるかもしれない。この曲は、ノルウェーを代表する作曲家26歳の時の作品だ。グリーグ唯一のピアノ協奏曲でもある。北欧ノルウェーの鬱蒼たる森林、蛾々とそびえる山々、豊かな湖水を思わせるこの曲は多くの人に愛されている。ティンパニのクレッシェンドから始まる第1楽章の冒頭から印象深い。第2楽章のロマン情緒溢れる旋律、第3楽章のリズムと壮大な曲想との対比、どの楽章も魅力一杯だ。
 
 3人のソリストをどのように紹介すべきだろうか。ニューアーティストコンチェルトシリーズの出演者として申し分のない人たちだ。生での
演奏をお聴きいただいてのお楽しみだと紹介しよう。
 優れた音楽性を持つソリストとの出会いは、指揮者やオーケストラにとっても大きな喜びだ。それは、ご来場の皆様も同じだと思う。
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