徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−

*六段*<想い出す映像>2007.9.21

 1960年ごろか、今から40年も前になる。NHK教育テレビで、アメリカのオーケストラと指揮者の演奏を放映していたことがあった。おそらく、いくつかのオケと指揮者の組み合わせだったのだろうが、なぜかフリッツ・ライナーとウィリアム・スタインバーグの指揮が印象に残っている。オケはシカゴ交響楽団とピッツバーグ交響楽団ではなかったか。(確信はないが、二人ともそのオケの常任だった。)
 フリッツ・ライナーの指揮は特に印象深い。なにしろ動くのは指先だけで、ほとんど腕は動かさないのに団員の表情とそこから出る音は、当時のテレビを通しても「さすが・・・」の一言だった。大家の風格とでも言おうか。圧倒的な存在感で画面から迫ってきた。レコードになっていた「運命」や「第九」の切り込みの鋭い演奏は、現在でもふるさは感じないだろう。ミュンシュの指揮とは正反対の指揮だが、その説得力には共通するものがある。
 想えば、多感な少年期から青年前期にテレビを通して、世界の巨匠の指揮を見ることができたということは、贅沢の極みだった。来日オーケーストラの演奏会には行くこともかなわず、しかし、テレビでアンドレ・クリュイタンス、ジョージ・セル、シャルル・ミュンシュ、イゴール・マルケビッチ、アラム・ハチャトゥリアン、イーゴリ・ストラヴィンスキーの指揮が見れたのだから。
 NHK交響楽団は当然のごとく、レギュラーの番組があり(名曲を中心に、スタジオでの演奏が多かったプロムナードコンサートが懐かしい)、日本フィルはフジテレビで、東京交響楽団はTBSで番組を持っていた記憶がある。後発の読売日本交響楽団がウィリス・ページを常任に迎え華々しく創立され、テレビでの放送は、今よりもはるかに多く、オーケストラを取り上げていたのではないか。その後に襲った東京交響楽団の解散や、その際の悲しい出来事、日本フィルが二つに別れてゆくことなどは、誰が想像できただろうか。
 自分の心を震わせてくれ、熱い思いをかき立たせてくれ、音楽への憧れを持たせてくれた当時のテレビ番組制作者に感謝をしなければならない。

      
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