徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−

*六十二段*<タネ>2008.3.8

 タネ、タナベ、と読んで何のことか分かる人は少ないだろう。では、ニッカンも加えるとどうだろうか。以前にはあった楽器のメーカー名だ。タネはフルートを作っていた。タナベは主に金管楽器、ニッカンは木管も金管も製造していた。と書いたが、高校時代の記憶なので正確ではないかも知れない。タネはそのフルートを吹いた記憶がある。友人がムラマツのフルートを持っていて試しに吹いてみたらそっちが断然よく、間もなく私のタネはムラマツに変わってしまった。


 小学校、中学校、高等学校といま吹奏楽が隆盛を誇っている。小学校の金管バンドも含め、管楽器を演奏している子どもが多いということで、うれしい限りだ。

 楽器の演奏を考えるときに、楽器の性能と価格を合わせて考えざるを得ない。現在の管楽器の普及を思うと日本の楽器メーカーは本当に大きな役割を果たしていると思う。何といってもコストパフォーマンスは世界一だろう。日本人の国民性なのか、とにかく廉価なものでも製品にバラつきが少ない。要するにあたりはずれがないということだ。そして音程も正確だし、音自体が出しやすい。楽器に初めて触れる子どもにとってこれはかなり重要だ。さらに、価格が手ごろなものからハンドメイドに近いものまで、選択の余地が大きい。これも良い点だ。

 中学校でオケの指導をしていた頃は、かなり輸入品に頼っていた。オーボエ、ファゴット、がその代表で、日本製で使えるものがなかったのだから仕方がない。当時の値段で80万とか100万だった。ほかの楽器でもクラリネットやトランペット、トロンボーン、ホルンも外国製のものが多かった。輸入品なので、何本も吹いて比べてからの購入が難しい。余計に製品のバラつきが目立ったのだろう。

 現在は日本製の楽器が優秀になり、リスクが小さくなった。フルートは幾つもの会社の製品の吹き比べをすることができる最右翼だ。率直に楽器メーカーの製造に当たっている人たちに感謝をしたい。

 声楽、合唱、指揮、作曲以外は表現の手段としての楽器が必要だ。楽器の進歩と技術の進歩これは一対ともいえる。音程、音色、表現力(音量の幅や、遠くまで響くか、など)、耐久性・・・さまざまな面で少しずつ改良を重ねていき、演奏に寄与してくれる。しかし、さまざまな楽器の中で、弦楽器、特にヴァイオリンは現在のコンピューターで解析し、近代的な製造技術を駆使して作っても昔のようにはできないといわれるから、これもまた不思議なことだ。

 音楽には不思議な要素がある。人間には・・・といってもよいのだろうが。魂を込めた音とか、心をこめるとか、はっきり目に見えたり、体で感じたりはしないのだが、確かに五感だけではわからない感覚があると思う。

 楽器の話からそれてしまった。私は、楽器は音を出すことが合理的にできるのがあるべき形だと思うが、むろん、そうは思わない人もいる。私の知人でファゴットをいまでもフレンチ・バッソンから替えない人がいる。音程はとりにくいし、音量もあまり出ないし、オケの中で吹くには不利な楽器としか思えないが、その難しさから離れがたいのか・・・よく聴けば音色も魅力的にも聴こえるし、なんとも不思議な楽器だ。考えてみれば音楽自体、厳密な合理性に裏付けされたものではないともいえ、その不合理さもまた魅力の一つともいえるのだろう。



 

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