徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−

*六十三段*<ルネ・ラリック>2008.3.9

 ルネ・ラリック美術館に行ってみたい。ルネ・ラリックは20世紀初頭のガラスの芸術家だ。

 自宅に比較的に近い幕張に北澤美術館があった。あったというのは、今は閉館してしまっているということだ。千葉県で幕張メッセを建設し、国際展示場を中心に産業、文化の世界への発信基地として幕張新都心の計画を推進していたころに、幕張の北澤美術館がオープンした。昭和の終わりから平成にかけての時で、日本の経済状況もよかった時だ。

 北澤美術館は、エミール・ガレ、ドーム兄弟の作品やティファニーのコレクションなど、豊富な展示品を誇っている。もちろんラリックの作品も収蔵している。ラリックの作品の中で特に見てみたいと思ったのは、瓶の色が緑といわれる香水瓶「シダ」だ。

 ラリックは結婚していた時に、アリスという後の妻になる女性と知り合う。1890年、30歳でそのアリスとようやく結婚するのだが、同時に売れっ子作家となったラリックは、ロンドンでほかの女性に気持ちを移してしまう。この結婚生活も不安定なままに、アリスは39歳で腫瘍のためにこの世を去ることになる。

 その三年後に作った作品が香水瓶「シダ」、瓶の色を緑にしたのは、アリスの瞳の色が緑色だったからだといわれている。恋人時代にアリスに送った恋文の中にも緑色の瞳のことが書いてあった。アリスへの思いをガラスの緑のなかに封じ込めたラリックの思いを思惟すれば、その作品をこの目で見たいという思いが募る。

 ガラスという、どんな形にでも自由に変えられ、誰にでも提供することができることに着目したガラスの芸術家たちは、いま生きる私たちにも多くの作品を残してくれた。ラリックの作品は車のラジエターグリルにも使われ、オリエント急行の列車の内装にも使われている。その時代の先端のマシーンに使われたガラス芸術家の作品・・・芸術と日常の生活との融合を見る思いだ。

 音楽を表現するときに、どんなスタンスで表現活動をするのか。先進性に進路をとるのか、啓蒙や底辺の広がりを求めるのか、いろいろな思いがある。残された時間の有限さを思えば、音楽の素晴らしさをより多くの人に知ってほしいという方向を目指すべきだろうと考える最近だ。



 

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