徒然草−日々思う、あんなこと、こんなこと。−

*七十四段*<憧れの音楽−1−>2008.3.26

 高校生の頃、シューベルトの歌曲集・冬の旅に憧れた。とはいっても全曲ではないのだ。恋人と別れた傷心をもったまま旅を始める青年の心は己と重ね合わさりもし、全曲を聴き通すエネルギーはなかった。

 前半の三曲が憧れの曲だ。おやすみ・溢れる涙・菩提樹の三曲に心をうばわれた。
高校生の頃だ。悩みや迷いの連続だ。美しいメロディーを欲した。詩もこころが引きこまれるような言葉のうつくしいものや、寂しいものを求めていた。

 あの頃だ。歌っているのは、ヘルマン・プライカかバスバリトンのハンス・ホッターだろう。三曲ともに前奏から惹かれる。特に、一曲めの、おやすみのピアノ前奏が極めつけだった。

 バリトンのフィッシャー・ディスカウが65歳の時に来日し、若手のピアニスト、ハルトムート・ヘルを伴奏者にしての演奏が、前奏から気持ちが前に出て、鳥肌がたった。ディスカウも無論、声の老いを感じさせながらも魂のこもった名演だった。

 このふたりの演奏のおかげで、高校生のときの憧れた音楽が大人になってさらに確信をもった憧れの曲となった。

 テレビドラマの冬の旅もあった。菩提樹が全編で使われていた。さらに、この曲が価値あるように思えた。




 

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